人気ブログランキング | 話題のタグを見る

パタン・ランゲージ/C.アレグザンダー その2男と女


男と女といっても、色っぽい話題ではありません。期待した方残念でした。
またもや、パタン・ランゲージという書籍の中の話です。
パタン・ランゲージ [環境設計の手引き]/C.アレグザンダー他著 平田翰那訳
鹿島出版会 1984 (A Pattern Language, Christopher Alexander, originally published in English by Oxford University Press, Inc., 1977)より

p.p.27 男と女
・・・さらに、コミュニティーや近隣は、あらゆる世代の人びとにバランスのとれた活動を提供せなばならないー7000人のコミュニティ、見分けやすい近隣、ライフサイクルと同時に、男女のバランスに合わせてそれらの活動を調整し、男女両方の生活を反映するものを平等に用意せねばならない。

 1970年代の町は、男女の性によって分裂している。郊外は女のものであり、仕事場は男のものである。幼稚園は女のものであり、専門学校は男のものである。スーパーマーケットは女のものであり、道具店は男のものである。

 生活のどんな面をとっても、純粋に男性的または女性的ということはあり得ない。性の文化が極度に進行した社会では、現実がねじ曲げられ、その歪みが固定化し、永続化する。科学は男性が支配し、それも機会的なものの見方が支配する。男性のエゴの産物である戦争が外交を支配する。幼い子供の学校は、家庭と同じく女の世界によって統治される。住宅はばかばかしいほど極端に女の領域になり、建設業者や開発業者は、繊細で隅々まで「洗練された」化粧室まがいの住宅像しか描けなくなってしまった。家庭というものが、玄関先におが屑が散らかっていたり、物をつくったり、野菜を育てる場所であることは思いもよらないようである。
 このような問題を解決するパタンは、今のところ明らかでない。問題を解決できそうな建物、土地利用、制度などについて助言はできるが、この社会的事実への人びとの自覚が高まり、環境への影響力が強化されるまでは、その物理的な関係は理解されないであろう。要するに、男も女も都市生活の各自の領分で、相互に影響し合うようになるまでは、このような社会秩序と共存する物理的パタンがどんなものになるか分からないであろう。
 したがって、
 
 環境のどんな部分ー個々の建物、オープンスペース、近隣、仕事コミュニティなどーにも、男と女の両方の天性が混ざり合っているかどうか確かめること。台所から製鋼工場に至るまで、あらゆる規模のあらゆる計画において、この男性と女性のバランスを忘れないこと。・・・


アレグザンダーの皮肉に満ちた文章を心地よく読んだ。しかし現実は、すくなくとも世界でもっとも男女平等が進んでいる国と言われるノルウェーでの現実は、彼の70年代の描写よりも格段に良くなっているんだと思う。この国では基本的に専業主婦は存在しない。この間政府が、保育園(幼稚園か?)での受け入れが現実に追い付いていない実態を考えて、保育園に入ることができなかった(もしくは入らなかった)子の親が家で子の面倒を見る場合、助成金を出す制度をつくったら、それは女性の社会進出を助けず、家に縛り付ける要因になると非難ごうごうを浴びている。
日本のように、妻を養っていると夫の払う税金が大幅に免除されるシステムについて説明すると、ノルウェーの人以外でも驚く人は多い。
日本では未だ、結婚し子供をもちそして成功した女性の建築家というのは、なかなかいないが、結婚し子供を持ち成功した男性の建築家というのはわんさかいる。明らかに、男女平等がなりたっていない社会と言い切っても、なかば問題ないように思う。
女性が子供を産むという生物として当然のことを行いながら(またここでおこる議論、女は子供を産むべきだというのはまちがっていると思う。産みたい人が躊躇せず産むという選択が出来る社会の実現が大切なのであって、一つの価値観を押し付けることは間違っている。)、社会のために社会の一員として働き、また自己の夢ややりたいことに情熱を向けることが、できないまたはおそろしいほど難しく、健康を害すほどの努力を要する社会というのは、多くの人を不幸にするのではないだろうかと思う。そして今の日本の状況は一般的にいって、これなんだと思う。
その結果の1.29(日本の女性が一生の間に産む子供の数の平均)ではないのだろうか。
そしてこの考え方が、男は外に出て働くべきだ、企業戦士となって女、子供を養うべきだという考えを生み、それが男性に取っても必要以上のプレッシャーとなってぎすぎすした社会を生み出す。それよりも女も男も共に働き支え合うといった社会の方が健康的で、調子が悪いときは一方ががんばって支える、またハンディキャップのある人や病人や老人・子供といった効率化を重視する社会では排除されがちな人びとも社会の一員として支えあうといった、もっと人間的で優しい社会の実現の基礎に女性の社会進出はあるのではないかと思う。

ついつい熱く長く書いてしまった。ノルウェーでの女性の社会進出については、後日。
by motokologic | 2006-06-03 06:27 | Landscape/ Urban pla
<< ピンセ 大学制度 その1 >>